椎間板ヘルニアと診断した犬のケース

  • 2025.11.11


近医からご紹介いただいた症例です。

急なふらつき、お尻が立たなくなったとの主訴で当院へ来院されました。

プロフィール

動物種:犬
品種:ミニチュア・ダックスフント(5kg)
年齢:7歳齢
性別:去勢雄

来院時の様子

左後肢の不全麻痺が認められました。

右足は問題なく動いていますが、左足がついていけずナックリングしたり、引きずるような様子があります。

また、体の向きを変えたり、強く足を踏み込もうとすると転んでしまいます。

診察・検査結果


まずは触診(神経学的検査)とレントゲン検査を行いました。

神経検査では左後肢のCP低下、浅部痛覚低下、随意運動の低下などが認められました。

レントゲン検査では、脊椎の湾曲が認められるものの、明らかな骨病変、椎間板病変は認められませんでした。 

当院では麻酔科でのCT検査にうつる前に、一般的な内科検査やレントゲン検査を行い、内臓器の疾患や骨の疾患などを除外するようにしています。

↓四肢に麻痺(または麻痺の様な)症状起こす疾患↓

内臓器の異常…内分泌疾患や腫瘍など基礎疾患を伴う血栓症、電解質異常など

       重度な肝疾患・腎疾患など

骨の疾患…変形性関節症、腫瘍、椎間板脊椎炎など

※内臓器の異常に関しては、四肢の麻痺以外にも食欲不振や嘔吐・下痢など全身的な症状を伴っている場合が多いです。

レントゲン(胸部)
レントゲン(腰部)

レントゲン検査では脊椎の湾曲はあるものの、明らかな病変は認められませんでした。

今回は麻痺の程度としてはまだ軽度で、歩行可能な状態でもあったため、急性椎間板ヘルニアG2相当と仮診断し、内科治療を行いました。 (疼痛管理、ケージレスト)

しかしながら第5病日に左後肢の神経症状の悪化が認められた(随意運動が消失)ため、全身麻酔下でCT検査+脊髄造影検査を行いました。

CT検査(横断像)

CT検査の結果で、L2-L3の左側から椎間板物質による中等度~重度の脊髄圧迫が認められました。

診断

腰部椎間板ヘルニア(ハンセンI型)

治療

片側椎弓切除術(L2-L3 左側アプローチ)を行い、脊髄を圧迫している椎間板物質を除去しました。

摘出後は脊髄の圧迫が改善されたことをよく確認し、閉創します。

※以下、術中の写真です(閲覧注意)

椎間板物質の摘出後

最初は椎間板物質で見えずらくなっている神経が、綺麗に露出された視野になります。

洗浄後、筋膜、皮下織、皮膚を縫合して終了

今回はグレードもそれほど高くなかったこともあり、手術の翌日からすぐに右足を動かしはじめてくれました。

グレード3以上の症例はは術後も持続的なリハビリを行うことが多くなりますが、この子の場合はすぐに歩行可能な状況でしたので、術後4日目に退院となりました。

考察

椎間板ヘルニアは、一般的にグレードが低ければ内科治療の成績は悪くありません。グレードⅠ~Ⅱ相当の症状で、発症後それ以上の症状の悪化がなく長期管理を行える様な患者様に関しては、内科治療を選択している場合も多いです。

今回のケースでは麻痺の進行兆候が認められたことや、飼い主様の積極的な希望もあったため急遽検査・手術に進んだ症例でした。この他にも、短期間で症状を繰り返していたり、痛みが異常に強い患者様などにはグレードが低い場合でも精密検査をすすめるようにしています。

急性発症の椎間板ヘルニアの中では、緊急性が高いようなケースも少なくありません。

当院ではできるかぎりこういった症例に対して早期の対応を行えるよう準備を整えるようにしています。

術後3日