CASE
INTRODUCTION
症例紹介
扁平上皮癌と診断され、下顎骨切除した猫のケース
当院で扁平上皮癌と診断し、下顎骨を切除した猫の症例をご紹介します。
プロフィール
動物種:猫
品種:MIX
年齢:14歳齢
性別:去勢雄
主訴・診察内容
食欲廃絶、歯のぐらつき・出血、涎が出る、痛み。
症状は1ヵ月以上前から、徐々に進行。
診察・検査結果
右下顎骨吻側の歯肉が膨隆、じわじわと出血。

来院時の外貌。右下顎犬歯は動揺して完全に浮いており、閉口が困難。
臨床経過と診察時の所見から下顎の腫瘍を疑い、2日後に全身麻酔下でのCT検査を行う。




CT検査で右下顎骨の骨融解、骨増生を認める。
診断
口腔内腫瘍
治療
病変は進行が早く、正中を越えて舌根部まで一部浸潤していました。
扁平上皮癌などが強く疑われ、摘出するには両側の下顎と舌を含めた全切除、そこまで行なってもなお再発する可能性があることを飼い主様と慎重に相談しました。
飼い主様は侵襲の高い手術は望まれませんでしたが、患者の全身状態が悪いことや、出血もコントロールできず貧血が進行していた状況もあり、緩和的な手術として確認できる病変部の摘出を行いました。(顎骨3/4)
また、食道チューブの設置も同時に行いました。下顎のリンパ節は両側とも切除しました。
※以下、摘出した部位の写真です(閲覧注意)
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摘出した下顎骨(右側全摘、左側1/2)
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手術直後の外貌
考察
病理検査の結果は、やはり扁平上皮癌という結果でした。
マージンは取りきれていないので、ここからは再発との戦いになります。
幸い術後3ヵ月を経て、現時点では明らかな再発や転移、術創のトラブルなどはなく、体重は1kg以上増えて元気に過ごしてくれています。
術後は放射線治療は行わず、トセラニブを服用。
流涎やチューブ管理のため、カラーは着用したまま、ご家族と二人三脚で懸命に毎日を生きてくれています。猫の扁平上皮癌は非常に根治が難しい病気ですが、1日でも長く、お家で穏やかな日々を過ごしてくれることを心から願うばかりです。